覚醒異変
千「……と、いうわけで実験だよ兄くん」
兄「いや、いきなり家に来て何を言い出すんだよ」
いつものように、サモンサークルから現れた千影につっこむ。
千「……そこはおいといて」
兄「おいとくの?」
千「……今日はおもしろい薬が手に入ったので、兄くんで実験しようと空間転移してきたわけだよ」
兄「ほほー、て、いやいや、何勝手に人で実験しようとしてんだ」
千「……今回の品は、『前世の実』というものでね」
兄「うわ、さらりと流してるよオイ」
千「……前世の実といっても肉体が逆行するわけではないんだよ。前世における記憶が、よみがえるというものなんだ」
兄「なんか、えらく危険なシロモノなようなそうでないような」
千「……と、いうわけだから飲みやすく液体状にしてみたよ」
そう言って差し出してきたグラスの中には、一見するとオレンジジュースにしか見えなかった
……が、それがそんな生易しい飲み物でないことは、千影が所持している時点で分かり切っている。
兄「……まあ、実験もけっこうなんだけどさ……たまには少し散歩でもしない?」
千「……兄くんがそういうなら」
兄「じゃ、これは冷蔵庫に入れとくね」
二人が家から出ていったすぐ後、咲耶がバスルームから出てくる。なぜかタオルを巻いただけの姿だったが。
咲「お・ま・た・せーお兄様♪……って、いないじゃない!」
決めポーズで登場した咲耶は、ちょっぴりさびしかった。
咲「もぅ、お兄様ったら、せーかく私の成長した姿で悩殺してあげようと思ったのにぃ」
口を尖らせながら、咲耶はリビングを見回す。
咲「んー、湯上がりになんか飲みたいところよねー。そうだ、冷蔵庫にジュースか何かあったわよね♪」
その足でキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。
咲「えーと……あら? このグラス、オレンジジュースかしら?」
訝しみながらも咲耶は、それを取り出す。
咲「香りは、けっこう甘いかんじね。はっ、もしかしたらお兄様の飲み残しっ!? だとしたら、間接キスっ!?」
甘美な誘惑に、堪えられたのは一瞬だけだった。早っ!!
一口飲んだ途端、咲耶の意識は遠退いた。
兄「ただいまー」
咲「お帰りなさい、ご主人さまー♪」
玄関で、ほうきを掃いているメイド姿で耳にメタリックなアンテナをつけた咲耶が答えてきた
……って。
兄「なんだそりゃ」
おもわずつぶやいた兄に千影は、怒ったように返す。
千「……論理の旋律はいつも真実を奏でるよ。どうやら例のジュースを飲んだらしいね」
兄「マジかよ」
千「……この現象は、ある種の逆行催眠だからね。どうやら、咲耶ちゃんは前世で『HMX―12』だったようだ」
兄「なんかえらく具体的だな、で治す方法とかは?」
千「……あるよ、アレに色々調合した薬が」
兄「じゃ、飲ませてみよう」
兄「どうだ、咲耶?」
咲「はぁ!? 何言ってんのよ! さっさと勉強しないと……のんびりなんてしてらんないでしょ!」
兄「はぁ!? べ、勉強ってなんだっ!?」
咲「決まってるでしょ、東大受験のためよ」
きっぱり言い切る咲耶に、兄は半眼で千影の方に向く。
兄「千影、まさか」
千「……どうやら一角獣の牙が足りなかったようだ」
兄「善処してくれ」
兄「今度こそ大丈夫だろうな? 咲耶?」
咲「う、うぐ……」
兄「タイ焼き食い逃げ女か?」
咲「うがあああああ!! おまえなんか……猫のうんこ踏め!!」
兄「そっちかいっ!! つーか、それは名前違いであって前世じゃないだろうが!」
千「……隠し味に入れた『水瀬さんちのジャム』が、いけなかったようだね」
兄「なんだよ、ソレ」 治すのに三日かかったとかなんとか……。
<コメント>
迷水さんの「豹変」と似たような話になってしまいましたね。でもこちらは咲耶のみに搾り、
ほっちゃんキャラをどんどん出してく形ですが。最後にソッチのあゆを出したのは良いオチになったと思います。