ドジっ子花穂ちゃん
お節介?春歌ちゃん
センチな咲耶さん
トントン、トントントン…
キッチンで音がする。白雪にしてはきごちないなと思い覗いてみると、花穂ちゃんがいた。
「やぁ花穂ちゃん、何やってるの?」
「あ、お兄ちゃま!花穂、白雪ちゃんのお手伝いでぇ、お野菜切ってるとこなんだぁ」
「白雪ちゃんは?いないみたいだけど」
「材料が切らしちゃってたみたいでぇ、お買い物に行ってるよ」
「そうか…じゃ怪我しないように頑張ってね」
「うん!あっ!」言ってるそばから滑ってコケそうになる。
「あぶない!」
僕は慌てて駆け寄ったその時、
(ドスッ)
腹部に鋭い痛みが…
「くっ!ば、ばかな…」
ものの見事に包丁が刺さっていた。「あ!また花穂ドジっちゃったぁ、ってアレ?」
「どうしたの?お兄ちゃま」
「は、早く…救急車…」
「兄君様の入院中は私が精一杯お世話いたしますわ」春歌は最初にそう言った。
「あ、あぁ」
僕は幾分うろたえながら答えたものだった。それ以降、身の回りの事はたいてい春歌がやってくれている。それはいいのだが…
「私が食事を食べさせて差し上げますわ兄君様。はい、あーん」
「げ!全身が動かせないわけじゃないからいいよ、そこまでしなくても」
春歌(がーーん!)
とたんに重苦しい雰囲気が春歌の周りにだけ漂う。
気が付くと春歌が部屋の隅でブツブツ言っている。
「ああ、わかった!わかったよ!頼むから、それだけはやめてくれー」
また風呂に入れないため身体を拭くときの事。
「さぁ上着を脱いでくださいまし」「あ、あぁ、悪い」
春歌の声に力なく頷く。
傷口がふさがっていないため、身体をねじったり出来ないのが辛い。
「背中から腕、お腹、それからあんなトコとかこんなトコまで…いやん春歌恥ずかしい、ポッ」
「…あの…春歌ちゃん?…おーい…」
そんな訳で入院することになってしまった僕…
(致命傷になってなくて本当に良かったよ…シャレになってない)
当たり前だが、あの後大騒ぎになったらしい。花穂ちゃんはどうしようもないほど自己嫌悪に陥っているとか(まぁ無理もないか)
実はさっきまで病室に妹達がいたのだが、今はみんな帰ってしまったためとても静かだ…
しばらくボケっとしているとドアが遠慮がちに開かれた。そこには制服姿の咲耶がいた。
「お兄様…」
かすれた声。
「ん?どした咲耶、忘れ物か?」
聞いてみる。
しかし咲耶はゆっくりと頭を振った。その目尻には光るものがあった…
僕はそんな咲耶を見たことがなくてかなり激しく動揺してしまっていた。
「さ、咲耶!?も、もしかして泣いてたのか?」
見れば判ることなのに僕は馬鹿なことを聞いてしまった。
咲耶はそれには答えず、枕元まで歩いてきて僕の顔を見つめながら迫ってくる。
「ちょ、ちょっと咲耶さん?」
「お兄様…」
彼女の顔が接近してくる
「お、俺動けないんだって!ヤメレー!」
「冗談よ。お兄様が自由に動けないのをいいことに、そんなことはしないわ」
キス寸前のところで唇と唇の間に指が挟まれ、彼女はそのままそう囁いた。
「はぁはぁ、咲耶の場合まったく冗談に見えないんだってば」
僕は激しく疲労していた。
<コメント>
最初の話がインパクトあり過ぎ。当時は皆して「何ーー!?」とかビックリしてました。
纐纈さんの考えは、時々図りし得ない時があります。