親心


何年も前の話…

「今日からお前もお兄ちゃんだぞ」

「え?どういうこと?」

「ほら、あなたの妹の咲耶ちゃん。可愛いでしょ」

「僕の妹?」

「ああ。さあお兄ちゃん、咲耶ちゃんに挨拶しなさい」

「うん。こんにちは咲耶ちゃん」

咲耶は「きゃっ」と笑った。



それからも何度か海外と日本の往復を繰り返した両親。

日本に帰ってくると、何故か妹が増える。一人、また一人。

結局、僕は12人の妹たちの兄になっていた。

きっと母が海外で妊娠して、生まれる度に日本に帰ってきている。そうだと思っていた。

その両親が久しぶりに日本に戻ってくると言う。また新しく妹、或いは弟が出来たのかと思ったがそうじゃなかった。

「お帰り…」

「ただいま」

「今度は妹はいないんだね」

「ああ。最後に日本に来たのは雛子を連れて来た時だったな」

「うん」

「今日はね、お兄ちゃんに話があって帰ってきたのよ」

「僕に?」

「そう。大事な話」

「雛子も小学生になったし、そろそろ話そうかと思って」

「何の話をするって言うの?」

「あの子達、12人の話…」

「お前と、あの子達は兄妹じゃないんだ」

今まで自分が考えていた事全てが崩された。

「だってみんな、母さんの腹から生まれて、それで日本に連れて帰ってきたんじゃないの?」

「違うのよ」

「お前が生まれた後、女の子が欲しかったんだ。でも、母さんはお前が生まれて少ししたら、子供が出来なくなってしまってな」

「それでも、どうしても女の子が欲しかったから、日本に帰ってきてからすぐに孤児院に行って、咲耶を貰ったの。

その時、咲耶のほかにも沢山の子がそこにいたのを見たら、凄く可哀相になって…」

「それで、12人も…か」

「そう言うことだ。日本に最初からいた子達は日本の人に面倒見てもらうように頼んだけれど、春歌、四葉、亞里亞は向こうの孤児院にいた子達で、
貰ったはいいけど、その時仕事が忙しかったから、現地の人で面倒を見てくれると言う人に預けた。だから日本に来るのがつい最近だったんだ」

「そんなに仕事が忙しいなら貰ったりなんかするなよ。そんないい加減な態度で子供を貰おうなんて頭おかしいんじゃないのか!?」

僕は怒った。こんなに怒るのは初めてだった。

みんな、自分の両親のふざけた行いの為に、親と思っている人と離れて暮らさなきゃいけない目に合わされている。

他の人に貰われたなら、きっとその人と毎日一緒に暮らせただろうに。

みんなが、12人の妹達が遊ばれているように思えて仕方なかった。

「まあ待ちなさい。最後まで話を聞きなさい」

「下らない言い訳は聞かないよ」

「下らないかどうかは、あなたが全部聞いてから判断しなさい」

母に言われて、もう一度耳を傾けるようにした。そして母が話を再び始める。

「最初は何があってもみんな自分達の手で育ててあげようって思ってたの。
咲耶を海外へ連れて行こうと思ってたけど、ある時女の人から、
『良かったら私の手で育てさせてくれませんか』って言われたの。
私達の仕事が忙しいのを知ってた人だったから、そうやって言ってくれたみたい。
でもそれだけじゃなかったの。
その女の人も子供が欲しくて仕方なかったんだけど、中々生まれなかったらしくて、だからせめて実の子じゃなくても子供を育てたいって思ったらしいの。
私達もその気持ちは本当に良く分かってたから、咲耶のことをお願いしたの。
勿論、咲耶だけじゃないの。他の子もみんなそう。預かってくれた人たちもみんな、真剣だったのよ」

「中には実の親だったんだけど、子を手放してしまった事を後悔して、父さん達に引き取られた事を突き止めて、お願いしにきた人もいた。そう言うことだ」
「分かったよ…」
何も言えなかった。両親が言っている事は事実に違いないと、そう悟った。事実である以上、もうそれを受け止めるしかなかった。



今思えば、あの出来事は事実を知った瞬間だった。それと同時に、幸せのきっかけでもあった。

今、自分はかつては妹だった女性と永遠の愛を誓い、こうして二人で暮らしている。

もうすぐ、三人目の家族が生まれてくる。

両親が、僕が生まれた時、子供を引き取った時に感じた幸せ。それが、自分の下にもやって来る。


<コメント>
エラい生々しい話や。でも、いかにあの異常な家庭環境を説明するかという点では、
あまり無理が無くて良い話だったかもしれません。あなたなら13人兄妹をどう説明しますか?


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