ANOTHER STORY


それは、航がプロミストアイランドにやってきた時、あの渡し舟には、眞深・山田・航の他に、実はもう1人乗っていたのです…。

午後3時。何とか入学手続きを済ませた航は、ふとピアノの音に気づいた。「何だろう?」と思い、階段を上がろうとした…その時、

?「わあぁ〜!!」

航「うわあぁっ!そんなバカなぁ〜!?」

突然1人の男が飛び出してきてお互いぶつかりそうになった。

航「…大丈夫?」

男「ふぃ〜、危なかった〜…ごめんね。」

航「君もこの学校に?」

男「うん、そう!俺の名前は…ぁあ!!入学手続きぃぃっ!」

そのまま男は飛んでいった。…ふと航は足元にロケットを発見する。

「さっきの人のかな?」

とりあえず拾うと、思わず開いてしまった。そしてそこには写真は入っておらず、5人の名前が刻まれていた…。

“ツカサ”“ミサキ”“サラ”“ミミ”“チル”

夕暮れ時。あの後可憐との買い物に付き合った航は、ウェルカムハウスへと向かっていた。

正面ゲートまで来ると、ふと誰かの声が。

男「お〜い、航〜っ!」

航「ん?ああ、昼間の!」

昼間の男が駆け寄ってきた。

男「悪いんだけどさぁ…その、今晩だけ…泊めてくんない?」

航「え?いいよ、別に(笑)」

男「おぉ〜、助かったぁ〜。ありがとう!」

航「ところでその、名前…」

男「へ?あ〜そうか、まだ言って無かったね。俺は“中村 賢”っていうんだ、宜シク!」

航「僕は…」そう言いかけたその時、

「わ・た・る・く・ん。でしょ?」

賢が言った。

航「そんなバカな!?なんで知ってるの?」

賢「!(やべっ)」

『そういえばさっきも僕の名前、呼んでたっけ…』そう不思議がる航。

賢「ええっとね、それは…」

航「そ、それは…?」

息を呑む航。

賢「それは…いや、その…山田君、だっけ?アイツから聞いたんだよ、アイツから…」

航「山田から?う〜ん…」航が考えていると、すかさず賢が口をひらく。

賢「ほ・ほら、早く行こ!外は寒いし、ね!それにほら、俺たちの他にも誰かいるみたいだし…」

『え?』と思い振り返ってみると、確かに窓に明りが。『また、誰かいるのかな…』そう思いながらも家へと近づく。

[ガチャッ] 鍵を開けると、横から賢が「お邪魔しま〜す!」と、一足先に中へ。

…と突然中から[パンパンパン!]とクラッカーの音が!『何だ?!』驚いた航が扉を開けると…

「お帰り!お兄[ちゃん・様・ちゃま・たま]!!」の声が。

賢「・・・・は?」

航「あれ?皆…確か昼間の時の!それに…お兄ちゃん…てことは君達賢の妹さん、だったの?」

賢「………。」

…そして運命は、徐々に形を変え始めた。



航は昼間、“可憐・花穂・咲耶・雛子”の四人の女の子と会っていたらしい…。

どうやら彼女達は航との初対面を演出したかったらしいのだが・・・・・

賢「・・・あ、あの…」

花「はい?…あぁ!花穂またドジしちゃったぁ〜!!咲耶ちゃん、どうしよう…」

咲「へ?いやっ、どうしようって言われても…」

雛「わぁ〜い、おにいたまだぁ〜!」 航に抱きつく雛子。

賢「なんつー展開だ…こりゃ。」

咲「あ〜、違うんです、これは…その…ア〜ン、お兄様ぁ〜っ!」

航「ちょ・ちょっと、そんなくっつかれても…そんな、バカなぁ〜っ!」

『…さすがに最初はビックリしたが、彼女達が俺の妹でないことは分かっていた。…しかしこの感覚は一体…』

何故か…何となくだが、その時俺は、何だか懐かしい気持ちになった…。



航に4人の妹ができた。みんな航のことが大好きらしい。…でも、航はまだ戸惑っているみたいだった。

賢「おっと、部屋の整理、しないとな…」

あの後俺は、航の提案でここに居候することになった。

大勢のほうが楽しいと、妹さん達も快く迎えてくれた。

俺はみんなと少し離れた本館の部屋の1つを貸してもらったのだ。

賢「これで終わり、っと。」

俺は片づけを済ますと、別館へと戻った。

可「あ、中村さん。朝食の準備ができましたよ!」

賢「うん、ありがとう。 (テーブルへ移動) お!おいしそうなキムチグラタンだ!!」

航「ホントだ、どれどれ…」

賢「俺も!いっただっきま〜す!」

2人ともグラタンを口にする。

航・賢「…!?こ、これは・・・」

雛「おにいたま…中村さん…」

花「…大丈夫?」

航「か・・からひ・・・」

賢「…同じく…」

そのキムチグラタンはとても食べれるようなものではなかった。そのグラタンを味見する可憐と咲耶。

可「かっら〜い!!」

咲「可憐ちゃん唐辛子入れすぎたんじゃないの?」

可「えっ?これ作ったの、咲耶ちゃんじゃないの?」

花「じゃあ誰がグラタン作ったのかなぁ?」

雛「かな?」

謎は深まるばかりだ。…しかし話がどう発展したのか、妹達はだんだんと買い物の話で盛り上がる。

雛「あのね!ヒナは、絵本が欲しいな!」

話は賑わいを増した。

航「み、水・・・・・」

その光景を見た賢は、ふと立ち上がると一人外へ出た。

賢「…妹……ん、またか…。一体何なんだ、この懐かしさは…。」

花「中村さん、どうしたの?何だかボーっとしてたよ?」

賢「あぁ、ごめんごめん…それより皆どうしたの?」

花「ここにね、お花を植えるの!」

咲「ガーデニング関係の物も必要ね…。中村さんも何か欲しいもの、ありますか?」

賢「俺は……いもう…あ!いや、何でもないや、ははは…」

咲「あら、遠慮なんてしなくていいのよ?“お芋”ね?」

賢「え!?あ、う、うん…」

可「それじゃあ、皆でおつかいに行きましょう。」

雛「ヒナの絵本、おにいたまに読んでもらうんだぁ〜!」



そして皆は家へと戻っていった。本当は俺も、少しずつ“妹が欲しい”なんて思っていたんだな…。

それに、やっぱり何か大切なものを忘れている気がする…。いや、それは物なんかじゃない…優しく、温かな光が…5つ見える…。

君たちは…誰なんだ?

賢「…それにしても、“妹”が“お芋”に化けるとは…」



なかなか帰ってこない航を待つ妹達。

賢「そういえばさっき俺に“この屋敷にはバケモノがいる”って力説した後、どっかにいっちゃったよ。結構面白かったし(笑)」

咲「う〜ん、しょうがない、買い物は明日にしましょう。」

雛「え〜っ、ヒナ絵本欲しいぃ〜っ!おにいたまに読んでもらうのぉ〜っ!」

ヒナが駄々をこねだしたその時、航が帰ってきた。

妹達「あ、お帰りなさい!」

航「ハァ…ハァ…ハァ……」

咲「どうしたの、お兄様?」

航「…賢、頼みがあるんだ…。」

賢「?」

その顔は真剣そのものだった。



航「バケモノめ…来るなら、来い!」
と、目の前を鳥が横切る。

航「ひぃー、うわあっ…!?……なんだ、鳥か…。脅かすなよ、はぁ・・・。」

[ガチャッ]ドアを開けて賢が出てきた。その手には日本刀が。

賢「なぁ航、とりあえず中入れって…。」



咲「・・・・・・つまり、ここには何かが住んでいて、お兄様と中村さんはそれを退治してくれる、ってわけね?」

賢「いや、俺はみんなを守ればいいらしいけど…。」

花「じゃあお兄ちゃま一人で行くんだ!」

可「お兄ちゃん、カッコイイ!」

咲「頼りにしてるわよ、お兄様!」

航「え?あ、あはははは…」

咲「ところで中村さん、何でそんなもの持ってるの?」

賢「え?あぁ…俺、剣術やってたんだ。だからだよ。星見ヶ丘いっても剣道するつもりだしね!」

すごいツッコミたそうだったなぁ、咲耶。…まぁ無理もないけど。



可花春鞠「おはようございます。」

衛凛咲雛「おっはよ〜う!」

賢「お、おはよう。それにしても朝から8人の女の子に挨拶されるとは…」

あの後…怪物騒動の犯人は、更に増えた航の8…いや、9人の妹さん達だった。

賢「あれ、航は?」

白「にいさまならまだお部屋ですの。」

賢「そうか、ありがと。」

そういって航の部屋に向かう。

賢[ガチャッ]「航〜、朝ご飯だよ〜?…ん?どしたのかなわたるくん?」

航「…い、一日が濃すぎる…。今日もまた妹が増えるのかと思うと…はぁ。」

賢「あははは!大丈夫、さすがにもう増えないって!とりあえずぅ〜、ほら、朝メシ朝メシ!」

そういって航を無理やりリビングに連れていった。相当堪えているみたいだ…。まぁこればっかりはどうしようもないんだけどね。

賢『じいやさんの話だと妹は12人だから、スパイさんはあの妹の中にいるわけだな…』

そして、表のプロジェクトと、裏の“定められた複数の運命”が、音もなく動き始めた…



眞深が航の本当の妹でないことに気づくのに時間はかからなかった。パソコンを開き、眞深のデータを表示する。

賢「山神眞深…燦緒の妹さんか。じいやさんの言うとおりだな。…ふふ、まずはお手並み拝見、だね。そうだ、島民役の方々のデータも見ておかないと…」

一通りの資料を見終わった俺は、パソコンを閉じると庭へ出た。

賢「これから先、どうなるんだろうなぁ…」

『約束の島…。ここには海神家に関係のある人以外にも、山田のような何も知らない人たちもいるんだよな…。』

何も知らない人達は、その出会いが仕組まれていたとしても、運命だと感じることができる。

その出会いを喜ぶ人もいれば、その運命を握ることに疑問を持つ人だっている。

賢「俺にも…定められた出会いはあるのだろうか…。」

白「中村さ〜ん、ご飯ですのよ〜っ!」

賢「!…フッ、何考えてんだ、俺は…。はいは〜い、今いっきま〜す!」

白「今日のメニューは“白雪特性千影ちゃんの秘薬調味料入りゴルゴンゾーラの……”」

賢・航「ち、ちょっと待った!!」

白「…へ?何ですの?」

何はともあれ、明日から学校が始まる。



今日から学校が始まる。皆一緒の学校…

なんだか家が二つあるみたいだ。

山「よっ!!」

航・賢「わっ!山田!?」

教室の扉を開けると、そこには山田が。他にも可憐・眞深がいることがわかった。

そして昼休み。とりあえず一人で学校を見て回っていると…

賢「ん?あれは花穂ちゃん…チア部に入ったんだ。」

他に、一人で楽しそうに走っていった衛や、一人で照れていた春歌も見たっけ…。

賢「…にしても、航一人のためにここまでするか?普通・・・」



そして放課後。外では部活動宣伝が行われていた。まぁ俺は剣道部にでも…

「きみぃ〜!部活動はきまったかぁ〜い!?」

顔を覗き込んでくる一人の生徒が。

賢「あ、はい。剣道部のほうにはいろ・・・」

「あそーーーですか決まってませんかまだですかぁーー!!」

賢「いや、ですから…」

速「私は人呼んで“旋律の魔術師、軽音楽部部長速弾きギタリスト”と言いましてですね、私の音楽に懸ける情熱は・・・」

賢「あ、あんたキャラ違うよ〜(涙)」

その後、速弾きさんとお友達になった。冷静になると結構いい人なんだけど。



教室に戻ると、可憐が話しかけてきた。

可「あ、中村さん。お兄ちゃんと3人で帰りませんか?」

賢「ごめんね可憐ちゃん、俺ちょっと先生に聞きたい事あるから、航と先に帰っていいよ。」

可「そうですか…では、お夕飯の用意をして待っていますね!」

賢「うん!ありがとう。」

そう言うと俺は職員室へと向かった。先生を呼び出し、誰もいない教室へと移る。

賢「あの女の子…眞深、別に注意するほどでもないと思いますよ?航の妹として潜入したのは、考えたなぁ…なんてちょっと思いましたけど。でもなぁ…」

「今日一日の学校態度、ですか?」

賢「はい。あの程度じゃ、航が自分からこの島を出ようと思わない限りは大丈夫かと。そりゃ俺だって今後も手を抜く気はないですけど…。しかしじいやさんも大変ですね。」

爺「いえいえそんな。…これからも宜しくお願いしますよ。それと、“じいや”って言葉には気をつけて下さいね?」



じいやさんとの打合せを終えた俺は、教室へと戻る…。

賢「さ〜て、早く帰んないとせっかくみんなが作ってくれた料理が冷めちゃうな…。」

すると、誰もいないはずの教室を覗く眞深の姿が。とっさに隠れその様子を伺う…。

賢『廊下の角から女の子を覗く俺…。見方によっては変…!いやいや何考えてんだ俺は(汗)…ん?教室に誰かが・・・航?』

俺は教室へ入ることにした。

賢「ふぁ〜、疲れたぁ…。部活動見学も案外たいへ…あれ?航!なんだまだいたの?」

眞「げ、お邪魔虫…」

賢「あれ〜?そこにいるのは眞深ちゃん?よかった〜!一緒に帰ろ〜ぜぇ〜!!」

航「………。」

賢「ど〜した航?はよ帰ろ〜?…みんなが待ってるよ、お前のこと。」

航「…一人にしてくれないか…。」



賢と眞深ちゃんはどこかに行ってしまった。もう、帰ったのかな…?

航『………帰ろう…。』

昇降口を出ると、雛子ちゃんと亞里亞ちゃんが待っていた。こんな時間まで…。

驚いたな、あれには。…でも、一緒に帰っているうちに、『こういうのも、悪くないな…』なんて思ったり。



家に帰ると、案の定妹達が入れ替わり立ち代りまとわりついてくる。

航『一人だったころは、もっと自分の時間があったのに…これじゃあ……。やっぱり、ここを出・・・』

そう僕が決心しかけた時だった。可憐ちゃんが慌てた様子で部屋に入ってきたんだ。

可「お兄ちゃん、中村さんがまだ帰ってこないんです…。」

航「え?そんなバカな!?だって賢は僕より先に帰ったはずじゃ…。そうだ、眞深ちゃんに聞いてみよう!」

その時だった。

千「その必要はないよ、兄くん………。」

千影ちゃんが僕達を引き止めたんだ。

賢「その言い方、なんか刺さるなぁ…。」

千影の後ろから賢がひょっこり現れた。

航「賢!何処に行ってたんだよ?」

賢「ごめん、いろいろやってたらちと遅くなっちゃって…」

可「でも、何はともあれよかったです。あ、お夕飯の準備、今からしますね!」

賢「あ〜、いいよ別に自分でやるから…」



そんなこんなで夜。あのあと俺は別に帰ったわけではなく、再度じいやさんのところに行っていた。

本当は帰るつもりだったんだけど、今後の予定が決まったとのメールがきていたんだ。

賢「さてさて今日もメールをチェックして、と…」

メールをチェックし終え、ベッドに入る。

そして俺は…



最近よく見るようになった“ある夢”。日に日に回数を増してゆくその夢は…

賢「・・・!…また、あの夢か…。」

はっきりとは思い出せないその夢。思い出そうとすると、何かがそれを拒絶する。

賢「光・・・・・?」

その日の夜のことだった。
[ガチャン] 玄関の扉の閉まる音がした。
賢「航………」



ウェルカムハウスを出ていく航を、その後を追う可憐を、俺は窓から見ていた。

俺はベッドに戻ると再び眠りにつく。夢の中で俺は、5人の女の子と遊んでいたんだ…。

『…おにいちゃん、どうしたの?……』

『…あにサマ!こっちです…!……』

『…元気出して、あにっち!!……』

『………にィにぃ…あの……』

『…にいさん、今度私にも……』

温かい…。とても温かい光が、5つ・・・。

賢『やっぱり君たちは…俺の……』



朝。玄関で航を待つ亞里亞、掃除をする鞠絵と春歌、お花の手入れをする花穂たちがいた。

亞「…あ、兄や…!」

妹達が駆け寄る。みんなとても嬉しそうだった。航の周りに集まってみんなとても幸せそうに話す。

それを見た俺は…

賢「…航…!お前は、贅沢だ!!」

その声は明らかに怒りを感じさせるものだった。

航「け、賢……?」

妹達はみんなとてもビックリしていた。そりゃあ、あれだけ大声を出せば誰でも驚くだろう。

俺は話を続けた。

賢「さっき確信したんだ…やっぱり俺にも5人の妹がいる。…いや、いたんだ…」

航「…どういう、意味?」

賢「俺は…」

俺は全てを話した。俺には、幼い時に突然何の前触れもなく離れ離れにされた5人の妹がいた。

その時のあまりに残酷な光景と思い出を、俺は心に封印していたんだ…。

そしてそれはいつしか本当に消えていき、今では顔はおろか名前すら思い出せない…。でも、あの時……

賢「俺は確かにこう言った、叫んだんだ!“また会える!約束だ!!”って…。
この島に来たのには、そういう理由に体が知らず知らずのうちに反応したからでもあるのだろう…でも、“約束の島”だなんて…。
はは、馬鹿みたいだね…」

今考えてみると、これも仕事を引き受けた理由の一つなのかもしれない。そう考えていた時だった…花穂が・・・

花「そんなこと…そんなこと無いもん!!」

賢「…!?花穂、ちゃん?」

花「だって花穂、何て言ったらいいか分かんないけど…でも、でも…そんなの…嫌だよ……」

花穂が泣いた…。

航「…花穂ちゃん・・・。」

花「ぐすぐす……それにね…中村さんには、まだ妹が13人もいるんだよ…。」

賢「…?」

何を言うのかと思った。すると、涙目の花穂が俺に優しくこう言ってくれたんだ…

花「だって、同じ家に住んでるんだもん…。だから花穂、中村さんじゃなくて、“ケンお兄ちゃま”って呼ぶから…だから……いい、よね?」

賢「!!」

衛「へへ、確かに同じ家に住んでるんだし、家族同然だよね?“ケンにぃ”かぁ〜。フフ、い〜んじゃない?」

賢「花穂ちゃん…衛、ちゃん…」

温かい…とても温かい……。これが妹…これが俺の忘れようとしたものなんだなと思った。

今日、一つの思い出に終止符が打たれ、新しい思い出が始まりを告げた。

そしてこの日から、俺はある事を心に決めていた。それは、絶対にこの仕事を成功させる事。

そして、もう一つは…



朝ご飯。“一家団欒”での楽しいひと時…俺は話を持ち出した。

賢「航…俺は・・・心に決めた事があるんだ。」

航「ん?…何だい?」

賢「…幸せにする……」

航「え?」

賢「俺は…幸せにする!…だから……」

航は全てを察した…

航「賢…それ以上言わなくていいよ…。」

つもりだった。だが…

賢「航…ありがとう…。[花穂の方を向く]花穂、これからよろしくね!」

花「…うん!」

賢「じゃあちょっと早いけど…“式場”はやっぱりこの島がいいよね?」

全員「・・・は!!!???」

航が喉に物をつまらせた。

春「あ、兄君さまー!!」

衛「ち、ちょっとケンにぃ!いきなり何言い出すのさ〜!(汗)」

賢「あ、お料理は任せたよ!白雪ちゃん!!」

白「はいですの!って、そうじゃなくて〜…」

賢「おぉ、マイシスター花穂〜!好きだーーーっ!!!!」

花「ちょっとケンお兄ちゃま、落ち着いて…きゃ!抱きつかないでぇ〜!」

鈴「花穂ちゃん!!よ〜し、“トップガン、発射〜っ!!”」

咲「待って、鈴凛ちゃーん!!」

千「…ごちそうさまでした…………。」



○月×日

おにいちゃん、お元気にしていますか?私は今度、いろいろあって“プロミストアイランド”という島の学校に転校する事になりました。

“約束の島”……何だか、今度こそおにいちゃんに会えそうな気がします!今度こそ………

おにいちゃんが誉めてくれたバイオリン。まだ、続けてるよ?この音色を、早くおにいちゃんにも聞かせてあげたいな…。

おにいちゃん……今…何処にいるの…?

話したい事が沢山あるのに、それを話せない…

手紙を出したくても、居場所が分からない…

夢に出てきても、おにいちゃんは…決してこっちを振り向いてはくれない・・・・・・

おにいちゃんは…私のこと、まだ覚えてくれているのかな…?

『はっ…いけない、私…またそんなことを・・・・・・』

…とにかく、新しい学校での、新しい生活、新しい友達。不安もあるけれど……私には、おにいちゃんの唯一の写真…私の大切なお守りがあるから!

…おにいちゃんにも、早く会えるといいな・・・。司

司「おやすみ、おにいちゃん…」



賢「くまさん?」

咲「そうなの…で、お兄様が一緒に探しに行ってるって訳なのよ。」

何日か経ったある朝のことだった。雛子が、夢に出てきた“くまさん”を航と一緒に探しているらしい。

賢「でも、それってどういう…?」

咲「さあ…」

賢「…まあ何にせよ、咲耶ちゃんがもっと早く起こしてくれれば俺も手伝ったのに。」

ちょっと咲耶をからかってみた。

衛「でもケンにぃ、ボクが朝起こした時…

目、覚めたでしょ?返事してたし…」

春「あら、ワタクシも一度起こしに参りましたけど…。確かお返事もされたと思いますが…」

可「可憐も起こしにいったんですけど…」

千「偽りの…返事……」

咲「つーまーり、“生返事&4度寝”ってことかしら?お・に・い・さ・ま!?」

咲耶が“逆転勝利”を思わせる表情でぐいぐい詰め寄ってくる。

賢「うっ…ご、ごめんなさい…。」

妹達が笑う。温かい笑顔だ…

賢「じゃ、気を取り直して…作りますか、くまさん!」

妹達「つ、作る!?」

賢「そ、みんなでね!!」

その後、じいやさんにもこの事を伝えた。



夕暮れ時、航と雛子が帰ってきた。結局ぬいぐるみは見つからなかったらしいのだが、帰ってきた直後、じいやさんが落し物として届けてくれた。

賢『じいやさん…かなり無理が……』

喜ぶ雛子に、俺達が作った“くまさん”もプレゼントする。

賢「ははは、あれだけはしゃいだ上、疲れて一度は眠っちゃったんだろ?こりゃ明日もオネボウさんかな?」

航「はは、そうだね。」

航は、ここを出ようと再び思っていたことをすっかり忘れていた。

咲「明日は“オネボウ”しないでね〜、ケンお兄様♪」

賢「うっ!!こ、こらぁ〜!」

咲「ウフフフフッ♪」

航「?…何の話?」



その日の夜、じいやさんからメ−ルがきていた。

賢「えっと、なになに?『本日もご苦労様でした、今後も宜しくお願いします。
それと明日、中学部に一人予定外の転入生がおいでになります。向こうの新たな手かもしれませんので、念のため注意して下さい。では…』か…。転入生ねぇ〜…」

その時はまだ、深くは考えずに眠りについた。



次の日の朝。朝食を済ませ学校に行く。普段となんら変わらない一日、…のはずだった。

航と妹達がぞろぞろ歩き、その後に眞深、少し距離を置いて俺が登校する。学校の“朝の名物的光景”だ。

賢「あ、山田だ!お〜い…」

俺が声をかけようとした時、後ろから背中を強く叩かれる。いつものことだ。

速「オ〜ッス、おはよう!今日も一日頑張ろ〜な〜!!ハッハッハ〜!」

賢「は、速弾きさん。おはようございます…。」

速弾きギタリスト、通称速弾きさん。軽音楽部部長の凄腕ギタリスト…らしい。そういえば本名知らないけど…まあいいか。

速弾きさんにぐいぐい引っ張られ、航達を抜いて学校に着くと、速弾きさんは「じゃ〜な!」と言って行ってしまう。これもいつものことだ。

迷「相変わらず好かれてますね(笑)」

賢「あ、迷水さん。おはようございます。」

迷水さんは速弾きさんと同じで高校二年、一つ上の先輩だ。

成績は常にトップ5に入る、顔良し頭良しスポーツ万能の、絵に描いたような人だ。

そんなこんなで今日も一日が始まる。いつも通りのはずの一日が…



授業が終わって昼休み。山田のガルバン話に付き合わされる。嫌じゃないけど、マニアックで分からない…

そんな時、俺はまた“いつも通り”のあの光景を目にする。

賢「あ、静月〜、また何か描いてんのか?」

静月は同じクラスの友達の一人で、いつも何かを描いている。

家事ならなんでもござれ、特技はオカルト関連。航を凄く気にしているご様子だが…

山「え〜とどれどれ・・・うわっ!?」

絵を見た山田が驚いた。

賢「どうした?そんなに上手いか……!!?」

静「見たね?[キラーン]」

航「僕も見ていいかな?」

あんまり驚く俺達に反応して航がやってきた。

静「わ、航兄さん!!どうぞどうぞ…」

賢&山「待った!絶対見るなっ!!」

航「は?そんなバカな…?」

ほんと、そんな馬鹿なことは“いつもの”こと。こうしていつも通りの昼休みも終わった…。



放課後。部活をしに春歌と稽古場へ行く。賢「狂先輩、こんにちは!」

春「本日も宜しくお願いいたします!」

狂「うん。さあ、入って入って!」

狂先輩も高校2年、部活の先輩だ。日本武芸のほとんどをこなす上、槍術や棒術もできちゃうため、春歌の稽古相手にもなったりしてくれている。

先輩と呼んでいるのは、そっちの方がしっくりくるからだ。

狂「ふぅ〜、じゃあ今日はココまで、お疲れさん!」

賢・春「ありがとうございました!」

部活も終わり、春歌と一緒に帰る。最近はいつも一緒だな。

春「ワタクシは、狂先輩のような方が理想なんです。」

賢「へぇ〜、じゃあ結婚相手候補の一人かな?(笑)」

春「い、いえ、そういう意味ではなくて、あの方のように日本の伝統を極め、兄君さまのために立派な大和撫子に…」

賢「でも、それが本当に航の望む事なのかな?」

立ち止まって春歌を見つめた。

春「え・・・?」

賢「できない事があるから嫌われる、なんてことは無いと思うよ。それに、もしあるならそれは愛じゃない…。
春歌ちゃんは今でも十分可愛いのに、なんでそこまで航に尽くすのかな…?春歌ちゃんだけじゃない、みんなそうだ…。」

春「それは・・・」

春歌が言葉を探し当て、俺に言おうとした時だった。その答えを聞いてはいけない気がして、とっさに俺が口を開く。

賢「あはは、ごめんごめん、からかったりして悪かったよ。さあ、帰ろうか!」

春「も、もう……賢兄君さまったら♪…ポッ♪」

賢「“ポッ♪”って、…あ〜!春歌ちゃんもしかして俺に惚れた?…ポッ♪(笑)」

春「そ、そんなことありませんわ!!!!・・・・・・あ、」

賢「………そんなハッキリ言わなくても…ぐっすん……。」

そんな雑談をしながら春歌と商店街で別れた。

あの時聞かなかった…いや、“怖くて聞けなかった”答えの解答欄を、自分で必死にうめながら・・・



賢「シャー芯、消しゴム……うん、全部買ったはずだし、そろそろ帰るかな…。」

司「え〜〜っと…この住所だと、あっちかな・・・?」

[ドンッ!]賢&司「わっ!?」

考え事をしていた俺は、うっかり前から来た女の子とぶつかってしまった。

賢「イテテテテ…あ、ゴメン!大丈夫だった!?」

司「いいえ、こちらこそすいませんでした。家を探していたもので…」

賢「家?…そういえばその制服、この島のじゃないね。あ、例の転校生か…」

司「例の?」

賢「うんそう・・・っていや、何でもないよ!はは、ははは…。あ、そうだ、ここなら案内してあげるよ。」

そういって俺は彼女を目的地までとどけた。

司「どうもありがとうございました!あ、よろしかったら少し上がっていきませんか?
引越しの方々がやってくださったみたいで、部屋の荷物はあらかた片付いてますから大丈夫ですよ♪」

賢「そう?じゃあ…ちょっとだけ、お邪魔しま〜す♪お客さん第一号かな?」

ここだ。ここで、“いつも通り”の歯車が狂ったんだ…



[ゴーン、ゴーン…]時計が七時を知らせる。

賢「やべっ!もうこんな時間か〜。ごめんね、こんなに遅くまで。」

司「いえ、こちらこそ♪今日はありがとうございました。」

賢「じゃあ俺はこれで…」

玄関を出ようとした時だった。

司「あ!あの…私、中村司っていいます。よろしかったら貴方のお名前も教えていただけませんか?」

賢「へぇ〜、君も“中村”なんだ!俺は中村賢、宜しくね♪」

司「!!」

賢「あ〜ごめん!もう行かなきゃ…じゃ、じゃ〜ね〜!!」

そういって俺は走って帰っていった。急がないと、白雪の料理が冷めてしまうからな。

『中村…“賢”。あの方は確かにそう言った。

私の持ってる昔の写真は、黒髪だったからピンとはこなかったけど、銀髪にしてみると…』

司「おにい、ちゃん・・・なの?」



ア「それは突然姿を変えて、ソナタの前に現れるだろう。形無き想いが結晶化する…全ては神の気紛れであり、それをソナタは善・悪の何れかに傾けるであろう…。意思よ…」

賢「は、はぁ…」

コードネーム・アンリミテッド。この島の“Sister Prinsessプロジェクト”四天王の一人で、他にじいやさん、トップガンさん、JZXさんがいる。

ア「ソナタにこのソイルを」

賢「…これは?」

ア「それは、“愛ある者の象徴・ラブラドールピンク”だ」

賢「あ、ありがとうございます。あの俺急いでるんで、これで…」
そういってその場を逃げるように立ち去った。

賢「しっかし何なんだ?このビー玉…。まあ綺麗だから、また亞里亞ちゃんにでもあげるかな…」

…にしても、アンリミテッドさんと千影、話合いそうだよなぁ〜。



そんなこんなで家に着く。中に入ると、白雪に軽くフライパンで叩かれた…
そしてメールチェック・・

賢「真実を…確かめたい…!」

昨日のメールにはこう書いてあった。

『転入生の名前は中村司さん。趣味はヴァイオリンだそうです。これは以前、お兄さんに誉められたのをきっかけに始められたそうなんですが、
そのお兄さんは現在行方不明だそうです…。賢様…もしかして、以前から行方の分からなかった、賢様の妹様なのでは?余計なお世話ですが…』

賢「みんな、先行くね…」

そう言って家を飛び出した。

司「あの人は、私のおにいちゃんなのか…本当におにいちゃんなのか…確かめたい!」
そういうと、司は家を飛び出した。

ア「もう一つの運命が…。風が、変わり始めている…。トップガンと、JZXを呼ばねば…じいや様」

爺「そうですね、この計画に何かあってはなりませんし…。しかし、“島からの追放”だけは免れたいものです…」

ア「全ては神のみぞ知ること…です」

賢「ハァ…ハァ…ハァ…」

まだ少し残っている桜が、風で散っていく。

迷「凄いとは思いませんか?」

賢「!…迷水さん。何がですか?」

迷「散ってしまった桜は、二度と仲間のいる樹へは戻れない。しかし、時に風が仲間を呼び、時には一ヶ所に集める。そう、再開させるんです。」

賢「あの俺急いでるんでちょっと…」

迷「待ってください。」

賢「そんな時間はありません、退いて下さい!」

迷「今の貴方では、これから起こる物事を悪しき方へしかもっていけませんよ?何を急いでいるか知りませんが、もっと冷静になれば…」

賢「どけっ!!」[ドカッ!!]

迷水さんを突き飛ばして学校へと急ぐ。

狂「あれ?迷水。何を座り込んでいるんですか?それにしても、部に入ってもいないのに毎朝早く図書室貸切読書とは、ご苦労様です。」

速「な〜に言ってんの狂ちゃん!メェちゃんは我が軽音楽部の副部長だよ〜?」

迷「入ってない、入ってない…」



学校に着いた。司という少女を手当たり次第に探すが、見つからない…。

結局そのまま授業が始まり、気がつくと部活も終わっていた。

春「賢兄君さま…何だか今日の賢兄君さまは、いつもと違いますわ…。」

賢「・・・・・・。」

そのまま春歌を振り切って正門を出ると…待っていたんだ。航と、11人の妹と、“オマケ”が。

航「皆で帰ろうと思ってね。賢、今日はちょっと様子がおかしかったから…。」

「兄君さま!」そう言って、春歌も追いついた。

四「それに私達の間で隠し事はなしデスよ!“兄妹”なんデスから!!…まあ、隠し事があっても、四葉はみ〜んな知ってますケドね♪」

「きょう・・・だい?」

賢「!!」

夕暮れ時、俺の後ろには鮮やかな夕日と、一人の“少女”がいた。

航「…つかさ?」

司「賢…さん、あなたは…、あなたは私の……おにいちゃん、なの…?」

司が尋ねる。

賢「司、君は…俺の、妹…なのか…?」

俺も同時に尋ねた。

花「お兄ちゃま、これって…」

航「花穂ちゃん、静かに…」

亞「…。(おなかすいたの…くすん。)」

司「じ、じゃあ、この写真に見覚えはありませんか!?私のおにいちゃんの昔の写真です!」

俺は写真を見た。

が、記憶の封印は完全に解けていないのか、それとも本当に知らないのか、思い当たるふしが無い。首を横に振る。

司「そう…ですか……。」

賢「………。」

司「……ごめんなさい。私、いなくなった兄を探しているもので、“ケン”って名前を聞いた時は思わずハッとしたんですけど…勘違い、ですね…。本当にごめんなさい…」

賢「司……」

司は今にも泣きそうだった…。

どうしていいか分からない…。ただ時間だけが刻々と過ぎてゆく。そんな中、その場を和ませてくれたのは、小さな女の子だった。

[ぐうぅ〜・・・]

全員「…ぐうぅ?」

亞里亞が顔を真っ赤にしていた。

白「あ、亞里亞ちゃん…お腹すいたんですのね…」

賢「ご、ごめんね、亞里亞ちゃん…。…さあ、メシメシ!!白雪ちゃん、買い物行こ〜♪」

白「は、はいですの!最近見つけた白雪オススメのお店にみんなで行くですの♪」

…やっと、雰囲気が和やかになってきた。

賢「あ、司!」

司「は、はい!」

賢「もちろん、“一緒に食べる”よね?」

司「え…?」

航「僕達も歓迎するよ。」

司「…はい、ありがとうございます♪」

四「よ〜し、そうと決まれば、その“みりん改”って言うお店をみんなでチェキしに行くデスよ〜!」

その後の四葉のハイテンションのおかげで、俺と司は徐々に元気を取り戻していった。



み「いらっしゃい。…と思ったら、またお嬢ちゃんか!今日はこの魚がオススメだよ♪」

商店街の片隅にあるお店“みりん改”。調味料から世界最高級食材、はたまた見たことの無いゲテモノ食材まで何でもそろっているお店。

店長はみりん改、通称みりんさん。

千「これは…何て言うんだい?」

み「お、嬢ちゃん、良いのに目をつけたねぇ〜。それは“モウダメロン”っていうスイカの一種だよ。」

賢「もうだめ…ろん?」

鈴「じゃあこのリンゴのような、パイナップルのようなのは?」

み「それは“ナップルアップル”!甘くて美味しいよ〜♪」

雛「わぁ〜い、ヒナ、それ食べたい!おにいたま、かってぇ〜♪」

亞「亞里亞は、あれがいい〜♪」

賢「どれどれ……っ!!」『食用蛙とスッポンじゃん!!』

千「亞里亞ちゃん…それを食すには、まずその生贄を…」

航「わわわわわ!千影ちゃん待った!!」

航が千影の口をふさいだ。

その後、手早く買い物を済ませ逃げるようにお店を後にした。

賢「よ、四葉ちゃん!行くよ!?」

四「チ、チェキ〜♪」

・・・ハマったな、こりゃ。

亞「亞里亞、カエルさんとカメさん、ほしかったの……くすん…。」

雛「じゃあね、ヒナは、本物のくまさんがほしいっ!」

千「熊の手は、左よりも右の方が栄養価が高くて…」

賢「こ、こら!千影ぇ〜っ!!」

千「…フフッ、冗談だよ……。」

ミカエル「くぅ〜ん…」

賢「大丈夫だよミカエル、お前を食べたりはしないよ。」

鞠「け、賢兄上様!変なことは言わないで下さい!」

「あはははははは…」みんなが笑うと本当に温かい。

…温かいのに、彼女の氷はそう簡単には溶けなかった。

司「(愛想笑い)……。」

賢『司……』



白「できましたの〜!さあ、ご飯にしましょ♪」

司「…イカスミおでん、ですか…?」

白「違いますの。今日のメニューは…“白雪特性ゲテモノ盛り沢山みりん改ヤミ鍋”ですの!!」

ミカエル「キャンキャンキャン!!」

鞠「あ、ミカエル!待ちなさい!」

千「…ごくり。美味しそうだね……」

賢「…マジすか、千影さん……」

雛「はい、おにいたま!あ〜〜ん…」

航「え?ひ、雛子ちゃん!?ちょっと、そんな…」

そんなバカなぁ〜〜〜…‥・



ち−−−ん…



司「今日は本当にありがとうございました!」

航「うん、またいつでも来てね!」

皆は今頃司を見送っているのだろう…。突如“司歓迎会”と化したヤミ鍋パーティ。ヤミ鍋とはいえさすがは白雪の料理だけあって、意外と美味しかった。

わいわい騒いでいるうちに、俺は一度寝てしまったらしく、気づくとソファーに座って寝ていた。

隣には雛子と亞里亞が寄りかかって寝ている。

司「では、失礼いたします。…あ、あの…賢さんに宜しく言っておいて下さい。」

…このまま寝ているふりをしていた方がいい。会えば、またわだかまりを作ってしまう…。そう思っていた。

『…もう行ったかな?』そう思い目を開けると、目の前にいたのは…

賢「つ、司!?」

司「はっ!ご、ごめんなさい!起こしちゃいましたか?」

賢「あ、いや…てっきり帰ったものだと思ってたから…」

司「“春とはいえ、まだ寒いから”って、航さんがコートを取りにお部屋へ。私はここで待つように言われたんです。」

賢「なるほどね…」

その後、コートを持ってきた航が司にコートを渡した。今度返しに来る、という約束で…。

学校で渡すという手もあるが、どうやら皆は俺と司が本当の兄妹であると思っているらしく、会話のきっかけを作ってくれたんだ…ありがとう、皆…。



航「あ、そうだ、賢…その……ゴメン!!」

賢「な、何が?」

航「これ…」

賢「これは、ロケット……(はっ)!!」

航「それ、僕と賢が始めて会ったあの時、ぶつかった拍子に落ちたんだ。いつか返そうと思ってたんだけど、つい忘れてて…。
ほら、そのロケット、“ツカサ”って名前が彫られてるでしょ?それで今日思い出して、後で探そうと思ってたら、司ちゃんに貸したコートのポケットの中に入っててね。
ゴメンね、遅くなって…。」

賢「……。」



可「すぐそこまでですけど、お見送りしてきました。」

航「うん、ありがとう。…賢?どうしたの、さっきから…?」

咲「何かあったの、お兄様?」

航達が議論しているのが微かに聞こえた。こんなに近くにいるのに…

四「チェキ!わぁ〜、手の込んだ細工がしてあるデスネ〜!!…賢兄チャマ?」

可「中にはどんなお写真が入っているんですか?」

賢はロケットを開いた。といっても、可憐に反応したからではない。賢にはもう、誰の声も届いてはいなかった。

春「あら、写真が…ありませんわ?」

四「ん!?何か刻んでありますね〜、チェキ!…えっと、“ツカサ・ミサキ・サラ・ミミ・チル”とあるデス。う〜ん、何方ですかねぇ…?」

衛「あ〜、もしかしてケンにぃの妹の名前?」

賢「俺の、妹・・・?・・・そうか!あの温かい光は……そう、そうだ!そうだよ!!」

賢が大声で叫んだ。ビックリして雛子と亞里亞が起きる。

記憶の封印は、今、全て解かれたんだ…



雛「う〜ん…眠いよ〜…もう朝なの?」

亞「ふわあぁぁ ぁ ぁ…ん、おはようございます…。」

賢「あ、ごめん、2人とも…。まだ寝てていいんだよ。」

そう言って俺はすっと立ち上がると、玄関へと向かった。

航「け、賢?こんな時間に何処へ行くの!?」

賢「司を…追う。」

衛「じゃあ、やっぱり司ちゃんは…」

俺は衛にうなずいた。そして、外へと飛び出していく。あのロケットを握りしめたまま…

眞「何だかややこしい事になってきたわね〜。とりあえず、報告!っと…」

花「眞深ちゃん、何してるの?」

眞「のわあ〜!!か、花穂ちゃん!?あ、いやその、これは…はは、ははははは……。ところで皆、何で出かけるような格好してるの?」

可「遠くからでも、見守ってあげたいから…」

鞠「何より、“家族”ですからね。」

春「それでは皆さん、参りましょうか…」

全員「…うん!」

眞「あの〜…ほうっておいた方がいいんじゃ……(まあ、こっちの方が面白そうだからいっか)」



島の上の方にある司の家からは、夜には星がいっそうよく見えた。

司「今夜も星が綺麗だな…。この星空を、おにいちゃんも見ているのかな…?」

小さい頃から皆とは別々に暮らしているうえ、連絡の取れたのは弥岬ちゃんだけだった。

“いつか、皆と再会できたら…今度は5人で仲良く暮したい…!”

…でも、それは夢でしかない。私のおにいちゃんは…

司「おにいちゃん!!何処にいるの!?」

私は、島のてっぺん・マッキー像の近くにある、湖のほとりにいた。夜空に向かって叫んでも、星は答えてはくれない。

そんな時、私の涙を優しくすくってくれたのは、おにいちゃんではなく、湖の水でした…。涙がこぼれ落ちる度に、水面が優しく揺れる…

「司、見〜つけた!」

「!?」

そこには、賢さんが立っていました。春とはいえまだ寒いこの夜に、上着も無しに…

司「あの、どうしてここに……?」

賢「家に行っても誰もいないからど〜しようかと思ったらね、司が俺を呼んでたから…しかも大声で(笑)」

司「だって、あれは勘違いで…その……」

賢「長い…かくれんぼだったね……」

司「え…?」

賢「だって、司言ったじゃないか…“おにいちゃん、何処にいるの?”って。あれ、ギブアップってことでしょ?」

司「あの、何を言っているのか…」

賢「俺も……思い出したよ。」

そう言ってロケットを見せた。

司「!!…この名前、私が彫った…」

賢「そう、これは…あの時の“なくせない写真”だよ…」

もう何年も前に、俺が妹達から誕生日プレゼントとして貰ったロケット。その記念すべき最初に“入れた”写真は…

賢「あー、ちょっと沙羅!何やってんのさ〜!!」

沙「え?何って、ドジなあにっちが私達の写真をなくしちゃったとしても、サラの事を忘れないように“なくせないお写真”を“入れた”の♪」

弥「でも、あにサマはそんな人ではありませんよ?」

沙「念には念を!ってね♪それっ!![ごりごり]」

ち「・・・にィにぃ・・・・・・・」

賢「…はは、ちるもどうぞ、彫っていいよ♪ほら、司も弥岬も美海も彫った彫った!!」

そうして刻まれたそれぞれの名前。あの頃は、その名前を見ればいつだってみんなの笑顔が浮かんできた…

賢「沙羅のヤツ、こんなに強く彫ってくれちゃって…ちるはともかく、司達は遠慮気味だったから彫りが小さくて…。」

司「じゃあ何で今まで……」

俺は司に記憶を封印していた事を話した。

司「あの事件…おにいちゃんが誰よりも辛い思いをしたから、きっと、誰よりも封印が強かったんだね…」

賢「司…本当にごめんっ!!」

司「…もう、いいの、…“おにいちゃん”。」

賢「!!」

司「かくれんぼ、私の負けでいいから…もう、もう何処にも行かないでっ!!」



その日の星空は答えてくれました。おにいちゃんのいる場所を…

湖は優しく揺れている。

二人の抱き合う姿を、優しく見守っているのか…天と地からの祝福を受けて、今ここに、記憶の欠片が集まり始めた。

賢「…帰ろうか、司。」

司「…うん、おにいちゃん…。」

…大好き……



爺「お帰りなさいま……?」

賢「じい……じゃなくて、先生!?」

司を家まで届けると、家の前でじいやさんが待っていた。

司「実は、私がこの島に来た時はもう不動産屋さんはアンティークショップになっていて、もう物件がないらしくて…そうしたら、とりあえず先生の家に来ないか?って言われて…。」

賢「それはそれは…妹がお世話になってます…。」

爺「やはり、賢様の妹様で?」

賢「…はい。」

司「?」

賢「…それにしても、俺も自分の家さえあれば司と一緒に暮らせるんだけど…何しろいそうろうだからなぁ…」



花「でも、家族でしょ?」

咲「お部屋だって、賢お兄様のお部屋のある本館の方ならいっぱい空いてるしね!」

鞠「毎日お掃除もしているので、いつでも大丈夫ですよ?」

賢「みんな!?……大丈夫って、何が?」

皆「うふふっ…お引越し♪」

航「賢の家族は僕達の家族、だよね?」

賢「航……!」

爺『航様…また一つ、御成長されましたね…。』

可「あ、司ちゃん。おはようございます♪」

雛「今日も、いいお天気だよぉ〜♪」

春「あら、弥岬ちゃんもおはようございます。」

司・弥「みなさん。おはようございます!」

にぎやかな朝、妹達の朝食の準備が始まる。

賢「航〜、おっはよ〜!朝食、行こう♪」

航「おはよう。…じゃぁ、行こうか?お腹空いたしね。」

二人でリビングへ向かう。扉を開けると、そこには…

妹「おはようございます、お兄ちゃん!(それぞれの呼び方)」

兄「みんな、おはよう!!」



あの後航は、本館の部屋を“5つ”貸してくれた。俺の、妹達の分だ…。

司の連絡を受けて、弥岬もこっちに転校してきた。

弥岬は司よりも少し背が高く、お姉さんのような優しい人だった。特技は可憐と同じピアノで、俺のことはあにサマと呼んでいる。

花「どうしたの、ケンお兄ちゃま?食べないの…?」

賢「…あ、いや……あれから色んな事があったな〜って。」

可「うふふっ…そうですね。でも、どれもみんな…」

賢「楽しい思い出ばっかり!、だったね♪」



皆「うん!!」


<Silverswordさんによるあとがき>
ちょっぴり強引な終わり方。
…いいのか?

自分のサイトでも同じもの書いてたら、次第に両立がぁ〜(泣爆)
…と、いうわけで!

続きはあるのか?なければいけない。
あの兄妹を、あのままにできる訳がないから…
作者は神となり、その世界を支配する。
…少なくとも私の場合、彼ら(登場人物)に不平等な人生を遅らせたくはないから…


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